医院BLOG

保険適応/顎変形症の矯正治療の流れ

外科的矯正治療とは、骨格のずれなどから、歯の矯正治療だけでは正しい噛み合わせに導くことが難しい場合に行う、 顎の骨などに対する外科的な手術を取り入れた矯正治療のことです。通常のワイヤー矯正と顎矯正手術を組み合わせて行います。

顎変形症とは

顎変形症とは、顎のずれや歯並びの不正によって、顔が変形したり、噛み合わせの異常が起こる状態のことをいいます。

上顎骨と下顎骨の大きさや位置がずれて、歯の移動だけでは完全に治すことのできない噛み合わせを、総称して「顎変形症(がくへんけいしょう)」といいます。下顎が突出したいわゆる受け口や、上顎の骨が前に出ているタイプの出っ歯、顎の左右にずれが生じる顔面非対称などが当てはまります。

上記のような場合は、通常の矯正治療だけでは土台となるアゴを動かせないため、ずれや歪みのあるアゴの中で歯並びのみをきれいに並べることはできますが、顔の中心やアゴが歪んでいるなどの根本的な解決はできません。そのため、顎矯正手術によって土台となるアゴの骨を切る顎変形症の治療が必要となります。

歯の移動は矯正歯科で、顎の移動(手術)は口腔外科で行う連携医療で治療を進めていきます。

治療の流れ

顎変形症の治療では、通常の矯正治療に加えて顎矯正手術が必要になります。

1.初診カウンセリング/精密検査/診断

初診カウンセリングの際、お口の中を簡単に見せていただき、歯並びや咬み合わせの確認をします。
大まかな治療の流れ・装置・料金についてなどを説明し、治療を希望の場合、精密検査へと進みます。精密検査の詳しい内容は下記をご覧ください。

精密検査から約1か月後に、診断結果と具体的な治療の流れをお伝えします。説明を聞き、治療に同意いただいたうえで本格的に顎矯正治療を行っていきます。

2.術前矯正治療

ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は取り外しができません

術前矯正治療では、後で顎の骨を切って噛みあわせを調整する(顎矯正手術)時に、良い噛み合わせになるように考えてワイヤー矯正で歯並びを綺麗にしていきます。そのため、この段階で歯並び自体は整いますが、かみ合わせはズレた状態になるため、一時的にアゴの変形がとても目立つ状態となります。一般に、術前矯正治療によって元の状態よりもかみ合わせのズレは大きくなる場合が多いです。

術前矯正治療は、1年~1年半程度行います。通院頻度は基本的に4~6週に1回です。

3.手術前準備

顎矯正手術に向けて歯並びが整った段階で、手術の直前準備に入ります。通院頻度が、1~2週間に1回に変わります。

①精密検査

セファロレントゲン
レントゲンや写真撮影など行っていきます

術前矯正治療を行った段階で再度、精密検査を行います。そのデータをもとに、矯正歯科医と口腔外科医の話し合いのもと最終的な手術方法や移動距離などを決定していきます。

②顎機能検査・ワイヤーへフックの装着

K7
顎機能検査
フック
フックを装着したワイヤー

K7と呼ばれる下顎運動解析診断総合コンピュータシステムで顎機能検査を行ったり、ワイヤー部分に顎矯正手術で使用されるフックを装着していきます。

③スプリントの型取り

スプリント(サージカルガイド)とよばれる顎矯正手術後のかみ合わせを安定させるのに必要な装置を事前に作成するために、型取りを行います。

④スプリントの試適

出来上がったスプリントの適合を確認し、問題なければ患者さんにお渡しします。お渡しした装置は、大切に持ち帰り、入院当日に口腔外科のスタッフに渡してください。

4.顎矯正手術

口腔外科にて顎矯正手術を行います。1~2週間程度の入院が必要となります。

顎矯正手術では顎骨を正しい位置に再配置し、チタンのプレートとネジで固定します。チタンのプレートとネジは、手術から約1年後に骨が十分に治癒したら取りはずす場合がほとんどです。

顎間ゴム
顎間ゴムイメージ

手術後は、かみ合わせが安定するまで顎間ゴムとよばれる小さな輪ゴムのようなもので、固定します。

5.術後矯正治療

顎の手術が終了した後は、上下の歯を緻密に、正確に噛み合わせるために、もう一度歯列の矯正治療を行い、最終的なかみ合わせを作っていきます。期間は半年から1年程になります。通院頻度は、3~4週に1回です。

6.保定

ソフトリテーナー
ソフトリテーナー(マウスピース型保定装置)
フィックスリテーナー
フィックスリテーナー

治療終了後は「後戻り」しやすいため、きれいに並んだ歯並びを定着させるために、リテーナーを装着して後戻りを防ぐ保定期間が必要となります。保定期間は2年間で、通院頻度は3~6か月に1回です。

費用・装置

当院は顎変形症の矯正治療が健康保険で行える医療機関(育成・更生医療指定医療機関、顎口腔機能診断指定医療機関)に指定されています。

そのため、3割負担の場合で、当院での治療と口腔外科での手術費用を含めておおよそ総額25~35万円程度のご負担になります。(手術費用は高額医療費控除の請求ができるため、ご負担金が7万円程度となります。)

また、毎回の通院にかかる費用などの目安は初診カウンセリング時にお渡しする料金表に記載がありますので、そちらをご確認ください。

マルチブラケット装置
健康保険を適用して行う矯正治療では、装置の種類を患者さまが選ぶことはできません

矯正治療は、マルチブラケット装置とよばれる装置を使用します。歯に直接、接着剤でブラケットを装着し来院の度にワイヤーやその他装置を使用して治療を行います。そのため治療期間中の、患者さん自身での取り外しはできません。

また、マウスピース型矯正装置やホワイトワイヤーを選択することはできません。国から指定された、透明なブラケットと金属色のワイヤーが使用されます。

対象年齢

顎変形症手術はアゴの骨を移動させる手術です。そのため、原則として骨の成長が終了した年齢以降の人が対象になります。おおよそ男性17才、女性16才からとなります。これはあくまで目安であり、成長の終了時期は個人差がとても大きいです。それぞれの患者さまに合った治療開始時期を、当院での相談や診断の際にご説明させていただきます。

まとめ

顎変形症の治療は、アゴの位置異常を改善することにより、咀嚼・発音・嚥下・呼吸・口唇閉鎖といった機能を改善し、同時に顔バランスの不調和も改善することができます。

自費治療が主となる矯正治療のなかで、健康保険を適用して治療を受けることもできます。しかし、顎矯正手術が必要となりそれに伴うリスクや1~2週間の入院が必要なこと、顎のずれの程度の基準がありどなたでも受けることができる治療ではないことも覚えていてください。

ご自身が顎変形症の適応かどうかの判断、具体的な治療例について知りたい方は、初診カウンセリングを受けることをオススメします。

BACK TO TOP