医院BLOG

抜歯矯正/健康な歯を抜く理由

矯正治療では、むし歯などになっていない健康な永久歯を抜いて治療を行う場合があります。どのような歯並びの場合に歯を抜く必要があるのか?どこの歯を何本抜く必要があるのか?歯を抜かずに治療をする方法はないのか?みなさんの疑問にお答えします。

いまの歯並びの問題点を知る

矯正治療をはじめるにあたり、まずは現状の歯並びがどのような状態なのかを詳しく調べる必要があります。ガタガタ・出っ歯・受け口・前歯がかみ合わないなど、人によって問題はさまざまです。

ガタガタ
ガタガタ(叢生・そうせい)
出っ歯
出っ歯(上顎前突・じょうがくぜんとつ)
受け口
受け口(下顎前突・かがくぜんとつ)
開咬
前歯がかみあわない(開咬・かいこう)

それぞれの問題を解消し、きれいな歯並び・かみ合わせをつくるためにはどのような処置をして矯正治療を行うべきか、精密検査から得たレントゲンやスキャンデータなどをもとに治療計画を立て、診断を行います。その治療計画の中で抜歯が必要となる場合があります。

精密検査についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

抜歯が必要なケース

矯正治療における抜歯が必要なケースはお口の状態によってさまざまですが、代表的な3つをご紹介します。

① 歯と顎の大きさのバランスがとれていない場合

主に、ガタガタ・デコボコの歯並びの人が当てはまります。

歯は上あご、下あごの骨に中に生えています。歯を並べるための十分なあご骨のスペースがないと、歯はきれいに並ぶことができません。そのため、歯が重なりあって生えたり、歯茎の上の方で止まってしまう(一般に八重歯とよばれるような)状態になるのです。歯の大きさとあご骨の大きさに不調和がある状態を、歯科の専門用語で「アーチレングスディスクレパンシー」といいます。これにより歯がガタガタ・デコボコに並んだ状態を「叢生(そうせい)」といいます。

口腔内写真
口腔内写真

歯が並ぶスペースが足りないのに、無理やりきれいに並べようとすると歯が骨からはみ出してしまったり、上下の前歯が無理な傾斜となり口元が膨らんだ仕上がりとなってしまいます。これを解消するためには歯を並べるスペースを確保する必要があり、その手段の一つが抜歯となります。

精密検査で得られたデータから歯とあご骨の大きさを計測し、歯をきれいに並べて正しいかみ合わせに導くためには何ミリのすき間を作る必要があるのかを確認します。そして、そのすき間を確保する方法として抜歯が適切な治療と判断されれば、どの歯を抜く必要があるのか慎重に治療計画を立てる必要があります。

② 上下の前歯が前に傾斜している場合

歯並びがそこまで悪いわけではないにも関わらず、前歯だけ出ている口元がでている口が閉じづらいなどの問題がある場合に抜歯矯正の対象となることがあります。「上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)」と呼ばれる状態です。このような状態だと見た目に影響があるだけでなく、歯並びの安定性や歯の健康寿命にも関わってきます。本来であれば抜歯が必要な矯正治療を、歯を抜きたくないからといって非抜歯(歯を抜かない)での治療を無理に行うとこのような状態になることも多いです。

上下顎前突
上下顎前突

上下顎前突の治療では、上下左右1本ずつ、合計4本の歯を抜歯することが多いです。精密検査で得られたデータから、上下の前歯の位置を何ミリほど後ろに下げるのが理想的かを調べていきます。前歯を後ろに下げる量が大きい場合、中間の歯を抜いて前歯を後ろに下げるためのスペースをつくる必要が出てきます。抜歯を行うことで、前歯に正しい傾斜と位置に移動させることが可能になります。

③ 上下のかみ合わせにズレがある場合

かみ合わせのズレとしてあげられるのは、出っ歯(上顎前突)受け口(下顎前突)などがあります。この場合、抜歯したスペースを利用して奥歯と前歯の前後的な歯の移動を行い、理想的なかみ合わせに仕上げていきます。上2本もしくは下2本の歯を抜歯することが多いです。かみ合わせのズレに対してどの程度の移動量が必要なのかを計測して、抜歯する歯の位置の本数を検討します

アングルの分類

また歯のズレだけではなくあご骨からズレがある場合や、歯の移動だけではかみ合わせの改善が難しい場合は外科的矯正治療が必要となります。外科的矯正治療は国の認定を受けた施設(顎口腔機能診断施設)であれば、保険適用で矯正治療を行うことができます。この場合、上下のあごの骨を動かす手術を行うため2週間程度の入院が必要となります。

抜歯する部位

基本的にはかみ合わせに影響の少ない歯を抜歯対象にすることが多いです。

前歯中央から4本目の「第一小臼歯」か、5本目の「第二小臼歯」

最も抜歯する頻度の高い歯です。食べ物を噛み切る前歯や、他の歯への負担を分散する役割を持つ犬歯と比べると、抜歯しても機能的な影響は少ないです。 

抜歯部位
抜歯部位
抜歯後イメージ
抜歯後イメージ

矮小歯(わいしょうし=通常の歯の形より小さめの歯)など形態に異常のある歯

左右で歯の形に不揃いがあると見た目への影響があります。

銀歯や根の治療を行ったことがある歯

一度歯科治療を受けている歯は、健康な歯と比べて歯の寿命が短くなりやすいです。

先天欠如歯(せんてんけつじょし=生まれつき足りない歯)の反対側の歯

前歯が1本生まれつき足りない場合などは、すき間の確保や歯並びの対称性の確保のために抜くことがあります。

非抜歯での矯正治療

デコボコの程度が軽度だった場合や、すきっ歯など歯並びにもともとすき間がある場合などは、非抜歯での矯正治療を行うことができるケースが多いです。抜歯は必要ない場合には、次のような方法で歯を並べるスペースを確保していきます。

抜歯以外のスペースの作り方

歯の側面を少し削る(IPR)

抜歯をしてスペースを作るほどのデコボコ量ではないが、すき間が足りない場合に用いられます。また、抜歯をすると前歯の位置が下がりすぎてしまう場合などにも適用されます。

いくつかの前歯の両側をヤスリのような器具で磨くように削り、スペースをつくる方法です。 IPRやストリッピングと呼ばれます。 削るのは歯の表層にある「エナメル質」と呼ばれる部分で、エナメル質の厚さは1~2mmほどといわれています。IPRで削るのは表面からわずか0.2〜0.5mm程度でエナメル質の厚みの半分以下のため、むし歯になりやすくなったり、歯がしみるなどといった症状はありません。複数の歯を削ればある程度のすき間を作ることができます。しかし、抜歯ほど大きなスペースは作れないので、軽度の症例において活用できる方法です。 

IPR

奥歯を後ろに移動させる

奥歯を後ろに動かしてすき間をつくり、他の歯も順次後ろに動かすことで歯を並べるスペースを確保します。親知らずがないことが前提になりますので、ある場合は親知らずの抜歯は必要となります。遠心移動(えんしんいどう)と呼ばれるこの方法は、インビザラインなどのマウスピース型矯正装置が得意としています。 

インビザライン
マウスピース型矯正装置
(インビザライン)

注意点

非抜歯矯正は誰にでも適用できる治療方法ではありません。非抜歯矯正を無理に行うと、噛み合わせに問題が生じたり、見た目に影響が出たりすることがあります。

代表的な例が、口元が出っ張り横顔のEラインが崩れることです。Eラインとは、鼻の先端とあごの先をつないだ線のことで、上下の唇がこの線の上に一致するか少し内側に収まっている横顔が理想とされます。十分なスペースがないにもかかわらず非抜歯で無理に歯を並べると、並びきらなかった前歯が前に出て、唇がEラインからはみ出してしまい、口が閉じずらくなったり、口元がでた横顔になってしまいます

また、後戻りの可能性が高くなりやすいという点にも注意が必要です。狭いスペースに無理に歯を並べるため、治療後の歯並びが安定しにくいためです。再度、矯正治療を行う必要があったり再治療の料金がかかることがあります。

抜歯のタイミング

基本的には、装置を装着する前に抜歯をしてもらうことが多いです。抜歯をしてスペースを確保した段階で、歯の移動を開始して歯並びやかみ合わせの改善を行っていきます。

成長が多少残されていそうな小学校高学年や中学生の場合は、まずは顎の成長を期待して非抜歯で矯正治療を行う場合もあります。経過観察しながら必要に応じて抜歯か非抜歯かを決めていきます。その場合、矯正治療の途中で抜歯となります。

矯正診断
診断の様子

旭川公園通り矯正歯科は矯正専門歯科のため、抜歯やむし歯治療などを一般歯科と連携して行っています。そのため、処置が必要な場合は一般歯科宛の紹介状を作成し治療を行ってきていただきます。診断時に、矯正歯科医より治療手順について説明を行います。抜歯のタイミングについてもその際にお話しします。

まとめ

矯正治療で抜歯が必要なケースは、以下のようにあげられます。

  • デコボコによって歯が並ぶスペースが足りない場合
  • 上下の前歯の位置を下げたい場合
  • かみ合わせにズレがある場合

抜歯か非抜歯かの判断は矯正治療を行う上で非常に重要です。抜歯矯正と非抜歯矯正にはそれぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらがよいとはいえません。歯並びや口元の見た目だけでなく、噛み合わせまで考えた総合的な治療計画が必要となります。

旭川公園通り矯正歯科では、初診カウンセリングを実施しています。なにかと不安な点が多い矯正治療について、ある程度の不安を取り除けるようなカウンセリングを目指しています。

BACK TO TOP